国際社会がタリバンをテロリスト指定するのは、なぜ間違っているのか?【中田考】
『タリバン 復権の真実』をなぜ私は著したのか?
■タリバンの「バーミヤンの大仏破壊」を非難する人たちの不寛容
もう一つは、龍谷大学で行われた国際シンポジウム「現代シルクロードのイスラーム復興」での講演からの引用です[注1]。ちなみにこのシンポジウムでは『タリバン―イスラム原理主義の戦士たち』(講談社2000年)の著者アハメド・ラシッドも共同発表者でしたが、ラシッドから私は「タリバンの素晴らしいスポークスマンだ」と褒められ(?)ました。
アフガニスタンのタリバン政権は、既述のようにシルクロード的系譜を引くものです。タリバンのバーミヤンの大仏の破壊について、日本のシルクロード愛好者の間で、他者の文化的価値を否定する非寛容な蛮行である、との非難の声が集中しておりました。しかし、考えてみるとこれは自家撞着(どうちゃく)、矛盾した言葉だと思います。タリバンが日本のお寺にある仏像を破壊した、あるいは破壊しろと言ったというならともかく、自分たちの土地、自分たちの財産を自らの信条に基づいて処分した。それに対して、自分たちの価値観を一方的に押しつけて、タリバン側を非難しておきながら、相手方を不寛容であると叫ぶのは、私は非常に自己の矛盾、問題ではないかと思っております。
異文化理解というものは、対立、軋櫟を解決するレディーメードの作りつけの普遍的な公式、あるいは万能薬といったようなものはありません。個々のケースに応じて、いろんな形で一つ一つ辛抱強く妥協点を模索していくしかないと思います。安易に話し合えば分かりあえる、解決するという予定調和的発想では、文化やヒューマニティーの名の下に、力の強い支配的な文化を持っている方が、弱者に対して自文化を押しつけるということになってしまうのではないかと思います。
タリバンの石像破壊をシルクロードの歴史の破壊というふうに見るのではなく、もっと姿勢を変えてみることも必要ではないかと考えております。過去の姿勢にこだわったものの見方をするのではなくて、むしろ現代の物質がすべてであるという世の中において、「物への執着」とか、あるいは永遠というものを物の形に現そうという安定性の人にはそういうものが向いていると思うんですけども、そういった文化に対する否定という、新しいシルクロードからのメッセージと考えてみることも必要ではないでしょうか。
[注1] 発表の全文は以下に収録されている。.中田考「現代シルクロードとイスラーム復興 -「文明間の対話の視点から」」『現代シルクロードのイスラーム復興』東方出版(2002年) 116-128頁。
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◉中田考『タリバン 復権の真実』出版記念&アフガン人道支援チャリティ講演会
日時:2021年11月6日 (土) 18:00 - 19:30
場所:「隣町珈琲」 品川区中延3丁目8−7 サンハイツ中延 B1
◆なぜタリバンはアフガンを制圧できたか?
◆タリバンは本当に恐怖政治なのか?
◆女性の権利は認められないのか?
◆日本はタリバンといかに関わるべきか?
イスラーム学の第一人者にして、タリバンと親交が深い中田考先生が講演し解説します。
中田先生の講演後、文筆家の平川克美氏との貴重な対談も予定しております。
参加費:2,000円
※当日別売で新刊『タリバン 復権の真実』(990円)を発売(サイン会あり)
★内田樹氏、橋爪大三郎氏、高橋和夫氏も絶賛!推薦の書
『タリバン 復権の真実』
《内田樹氏 推薦》
「中田先生の論考は、現場にいた人しか書けない生々しいリアリティーと、千年単位で歴史を望見する智者の涼しい叡智を共に含んでいる。」
《橋爪大三郎氏 推薦》
「西側メディアに惑わされるな! 中田先生だけが伝える真実!!」
《高橋和夫氏 推薦》
「タリバンについて1冊だけ読むなら、この本だ!」
※イベントの売上げは全額、アフガニスタンの人道支援のチャリティとして、アフガニスタン支援団体「カレーズの会」に寄付いたします。
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